<出雲崎おけさ>唄と<はやし文句>
おけさおどりと磯うつ波は いつも心が ソーレ いそいそと
今じゃ天下の良寛さまも 昔しゃ行脚の ソーレ 草枕
殿さ かいりゃれ夜がふけました 天の川原の ソーレ 西東
泣いてくれるな 出船の時は沖で ろかいが ソーレ 手につかぬ
させやかんざし 入れれやかもじ 男泣かせの ソーレ なげ島田
松をすかして 良寛堂が見ゆる 沖にゃ ろの音 ソーレ 唄の声
「海の出雲崎チョイト来て見やれ 
     春は鰯で大漁の浜よ
          夏は小鯛で舌つづみ  
              秋は秋鯖 嫁にはないしょ
                      冬は鱈汁 ソーレ 雪見酒」

厚し縄帯 腰には矢立 てんまかいかく ソーレ ほどのよさ
おけさ見るとて 葦で目を突いた 葦は生葦 ソーレ 目の毒だ
おけさ正直ならそばにも寝しょが おけさ猫の性で ソーレ じゃれたがる
雨はどんどと 降れどもはれる わしの心は ソーレ いつはれる
行こか柏崎 かえろか新潟 ここが思案の ソーレ 出雲崎
「鉢崎、柿崎、柏崎
       しもへさがれば 出雲崎
                にいがたの しもの 松ヶ崎
                  松前 にいしん 佐渡わかめ
                       いからしほしこは 砂だらけ」

佐渡と出雲崎ゃ 棹さしゃ とどく なぜにとどかぬ ソーレ わが思い
鮎は瀬にすむ 鳥は木にとまる 人は情けの ソーレ もとにすむ
チョイト良寛堂へ おまいりすれば 家内和合の ソーレ 風がふく
小木の城山 山鳩ないて ふごのわらびが ソーレ 背におもい
来いと一声 来るなと三声 来るな三声が ソーレ気にかかる
姑かんなりさま 稲妻小姑 嫁がさつきで ソーレ 雨となる
「無い無いづくしで 申そうならば
      良寛さまには 欲がない
            家も無ければ 金も無い 
                 妻子もなければ 色もない
                      渡る世間にゃ ソーレ 鬼は ない」

おけさ踊るなら 板の間でおどれ 板のひびきで ソーレ 三味ゃいらぬ
逢えばすいつく 手足でたぐる ほんにお前は ソーレ たこの性か
一人寝てさえ 小腹がたつに からす猫めが ソーレ 鼻なめた
乙茂てるてる 馬草はくもる あいの藤巻 ソーレ 雨がふる
色はしあんの 帆かけの船だ 風の吹きよで ソーレ 浮名立つ
小木の青葉に 赤坂つつじ どれが姉やら ソーレ 妹やら
「沖の大船 波の上
     えびすさまなら 岩の上
       大国さまは 米の上
           チュウーチュウーねずみは はりの上
               猫のラブシーン 屋根の上
                   わたしと お前さんは 床の上
                         そろそろ あがろか 腹の上」

あだし仇浪 よせては返す よせて返して ソーレ またよせる
おけさ流しに ふと眼をさまし 主の声おば ソーレ ききとめた
姉がさしたら 妹もさしゃれ おなじ蛇の目の ソーレ からかさを
山で切る木は たくさんあれど 思い切る木は ソーレ さらにない
今宵一夜は どんすの枕 明日は 出船の ソーレ 浪枕
浅い川なら ひざまでまくる 深くなるほど ソーレ 帯をとく
「越後出雲崎 魚の 本場
    とれる魚は 何やと きけば
       大鯛小鯛に あまだい めだい
           まだもあります アンコに ひらめ
              鮭に カマスに 八百八品
                 あなごの 浜焼き こいつぁー たまんないな」

わしが 思たとて お前さんがどやら 磯のあわびの ソーレ 片想い
三味は一締め 二の糸ゆるめ 三にゃお主の ソーレ 心しめ
嵐ばせでは 高帆をもつな 風に情けは ソーレ ないわいな
吹けよ西風 あがれよ ぎばさ かわいい殿ごは ソーレ 磯まつり
「越後出雲崎 良寛さまは
       破れ衣に 鉄鉢もちて
          子供 あつめて まいにち日にち
              てまりつくやら かくれんぼ
                 鬼にされても その身は 仏
                        ほとけ心に ソーレ 鬼はない」

花の都に すんではいるが おけさ踊りが ソーレ 忘られぬ
西行法師は山見ていさむ わたしゃ主見て ソーレ 気がいさむ
かかや 床とれ まくらはいらぬ 互い違いの ソーレ うで枕
沖の大船 錨で止める 止めて止まらぬ ソーレ 気がいさむ
小木の城山 朝日をうけて さても見事な ソーレ 男ぶり
       「一ツ 人目に立つなと おっしゃる
       二ツ 文をば やるなと おっしゃる
       三ツ 見るよな よい男でも
       四ツ 嫁には やらぬと おっしゃる
       五ツ 出雲で 結んだ 縁は 
       六ツ むりやり そはねばならぬ
       七ツ 情けの無い 親さまは
       八ツ やごめで暮らせと おっしゃる
       九ツ ここらが しあんの ばしょで
       十で 殿ごと ソーレ 寝たばかり」

「あらし畑の さや豆が
      一さや走れば みな走る
            わたしゃ お前さんに ついて走る
                     酒飲みなんぞは おいて走る」
私しゃ青梅 かりおとされて しそとなじんで ソーレ 色ついた
わたしゃ 出雲崎 荒海育ち 荒い浪こぎゃ ソーレ 腕がなる
「右と左に 米山弥彦
     向かいに見えるは 佐渡ヶ島
               あまた港の 数ある中で 
                      殿が 見そめた

                              
ソーレ 出雲崎」